小児神経学サテライトセミナー(摂食障害について)

皆さん、こんにちは。糸魚川こどもクリニックの渡辺祐紀です。2017年7月16日に上記勉強会がありましたのでご報告申し上げます。サブタイトルに「入門コース」と記載がありましたが、内容は専門医を対象としたような内容が多かったような気がします。今回は自分の受けた印象が強かった心身症の中でも摂食障害についてコメントをしたいと思います。

さて、今回は5つのセクションに分かれており、(1)診察の仕方、(2)てんかんの症候学・外科治療、(3)脳炎・脳症について、(4)代謝疾患について、(5)心身症、発達障害について、です。

発達障害と言えば、注意欠如・多動症や自閉スペクトラム症などが最近の話題になっていると思われます。しかし、これらに対しては文章が長くなることが懸念されること、各々の専門家によっても治療指針が多少異なることもございますので割愛させて頂きます。もちろん、当クリニックでもご相談に応じますのでご遠慮なくお尋ねください。

では、以下にもう一つの話題の心身症のお話しをさせて頂きます。心身症というと様々な疾患がありますが、今回お話しさせてもらうのはその中でも食事に問題が生じてしまう「摂食障害」というものに致します。不眠・寝不足気味の方はぜひご一読ください、眠れるはずです。

摂食障害と言えば、カーペンターズの女性ヴォーカリストのカレン=カーペンターが発症したことでも有名になった拒食症(神経性食思不振症)は皆さんご存じのことと思います。この疾患を発症された方には強い痩せ願望があり、痩せている方が美しいと思い込みます。困ったことにこの考えがエスカレートしてしまい、周りから見れば十分に痩せているのに「自分は太っているのだ」といった非普遍的なボディ・イメージを持ってしまう患者さんが多いと言われています。それ故に、医者や家族が「栄養が不足しているから、もう少し食事が必要だ、このままでは死んでしまう」という旨を伝えても患者さんは「太るから嫌だ、太るくらいなら食事はしない」と言い返すのです。さらに、理想の体型を得る(痩せる)ために元気よく走り回ったり、活動的になったりする方が多いのです。これが、一般的な神経性食思不振症の症状・経過です。

ところが、最近では痩せ願望を伴わない摂食障害が多くなってきたと報告されています。どういうことでしょうか、何故体形を気にするわけではないのに食事を摂ることができないのでしょうか。子どもたちの診療と食べることに生きがいを感じている自分には理解しがたいものでした。そんな凝り固まった自分の思考でしたが、講演を聴いているうちに柔らかく解けていくような気分になりました。その講演では「食べたい気持ちはあるけれど、食べると吐きそうになる」または、「喉に詰まらせて死んでしまうかも知れない」から食べたくないという不安からくるもの(機能的嚥下障害)や、「何となく気分が落ち込むから食事をしたくない」というもの(食物回避性情緒障害)までありました。

いずれの疾患でも、患者さんたちに精密検査をするものの現在の医療レベルでは原因を突き止めることができません。そのため、心の問題で「気の持ちようだ」と言われてしまうことが多いのです。症状に苛まれて医療機関を受診したにもかかわらず気の持ちようだと医者に言われ、友人、学校の先生方にはどうして食事しないのかと注意され、どの医療機関に行っても同じことを言われてしまうために家族が疲れてしまい言い争いの原因にまで発展することがあります。このような環境下に曝されては患者さんは突き放された気持ちになってしまうのではないでしょうか。患者さんも我々と同じように食事を楽しみたいし、遊んでいたいですし、学校にも普通に通いたいと願っているのではないでしょうか。

残念なことに、これらの診断がついたとしても特効薬がありません。しかし、苦しみを分かつこと、普通と違うと偏見を持たないことが治療の第一歩であり、症状を完全になくすことはできないまでも、症状を和らげることが医者の仕事となります。もし、身の周りにこういった症状で悩んでらっしゃる方がいたら、是非とも医療機関の受診を勧めてあげてください。また、これらの疾患が気になる、もっと知りたい方向けに図書が発売されておりますのでご一読をお勧めしております。
※参考書 大月書店 わかって私のハンディキャップ3摂食しょうがい

(了)

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