RSウイルス感染症について

皆さん、おはようございます。糸魚川こどもクリニックの渡辺です。新型コロナウイルス感染症の話題ばかりですので、たまには別の感染症のお話しをしようと思います。

感染症発生動向調査によるRSウイルスの流行(全国:2015年1月~2021年6月)グラフ

皆さん、このグラフはとある感染症の発症報告数を示すものですがご存じでしょうか。ヒントは昨年度の報告が殆ど0でしたが、今年の第10週(3月頃)から大流行するようになった感染症です(インフルエンザウイルス感染症ではございません)。そうです、答えは糸魚川市内でも流行中のRSウイルス感染症です。

さて、RSウイルス感染症は何かというと、鼻汁・せきを主症状とする、いわゆるカゼと同様・同等の感染症です。残念なことに特効薬がなく、症状を緩和させる治療(対症療法)が主となります。ほとんどの方は軽症で1週間ほどかけて治ります。ときに重症化する人もいますが0.1~1%(1,000人に1人)といったところです。

では、どのような方が重症化しやすいかというと『生後6か月未満児』『心疾患を患っている2歳未満児』『ダウン症や免疫疾患を持つ2歳未満児』『予定日より1か月以上早く出生された1歳未満の早産児』のお子さまと知られていて、重症化する確率は2-8%と言われています。つまり、RSウイルス感染症が流行している時期は、発症すると重症化するリスクの高い方々を守って差し上げるのが最善の策だと言えます。

ところが、市内の動きを見ておりますと検査を求める保育園や幼稚園が少なくないようです。原因としては年齢や基礎疾患を問わず流行しているという理由でお子さまに対して検査を行ってしまったり、医療者が保護者の皆様に十分な疾患説明をできていない状況があったりするからと推測されます。ただ、前述の通り診断がついたところでインフルエンザや水ぼうそうのような特効薬がなく、自然に治るのを待たなくてはならない病気です。病名を知るために、こどもたちの鼻や口に棒を挿入し、痛みと恐怖を与えることに意味があるのか甚だ疑問であり、心が痛むばかりです。また、RSウイルス感染症が流行すると登園を控えるように保護者に呼び掛ける施設もあるようですが、6か月未満のお子さまを隔離すれば良いだけなのにと思うのは自分だけなのでしょうか(何故なら、一般のお子さまにとってはただのカゼであるため、元気いっぱいなのです)。

繰り返しになりますが、RSウイルス感染症を発症して重症化しやすいお子さまを隔離してあげることが最も重要な対策です。「診断がつかないと隔離できないのではないか」と反論される方もいらっしゃるかも知れませんが、先に申し上げましたお子さまはRSウイルス感染症かどうかに関わらず(RSウイルス感染症の診断があっても無くても)、そもそも感染症に対して重症化しやすいと知られていますので、カゼ症状がある人に近付いても近づけてもいけないのです。生まれて間もないあかちゃんに、せきをして鼻をすするお子さま(大人も含めて)が近づこうとしたら止めてあげましょう。カゼが治るまではあかちゃんには触らないで、離れたところで優しく見守ってあげてね、と教えてあげましょう。それがたとえ兄弟であっても、命を守るために伝えてあげましょう。

RSウイルス感染症の拡大と特に重症化を防ぐためにも、皆様のご理解とご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

(了)