皆さん、おはようございます。糸魚川こどもクリニックの渡辺です。本日は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の小児例についてお話ししたいと思います。
皆さん、小児の新型コロナウイルス感染症は多いと思いますか、少ないと思いますか。その素朴な疑問の答えが下の図になります。
実は日本国内では、新型コロナウイルス感染症発症者の殆どが成人です。さらに、本疾患の発祥地である中国も同様で、発症者の殆どが20歳以上の成人だということが分かります。さらに、アメリカ合衆国の入院率・死亡率についての報告(調査期間2020年2月19日~3月16日までの間)もありますが、20歳未満の入院率は全体の2%で、死亡率は0%と報告されています。重症化リスクは60歳以上で高くなるという報告(ジオだより3月号より→https://www.itoigawa-children-clinic.jp/img/geo202003-01.jpg)も以前お伝えした中国の統計と大きく変わらない結果となりました。
続いては症状についてです。若い女性では味覚・嗅覚障害が多いと言われていますが、小児と成人では症状の違いがあるのでしょうか。実は、大いにあります。
発熱 成人 71% vs 小児 56%
咳 成人 80% vs 小児 54%
息切れ 成人 43% vs 小児 13%
上記のどれか一つ 成人 93% vs 小児 73%
上記より、小児は成人と比べて症状が現れにくいようです。先にもお伝えした通り、成人と比べて重症化しにくいのですから症状が出にくいのも当然の結果のように思えます。そして、もう一つの決定的な違いがあります。
左のグラフは感染しやすさを表したものです。上に行けば行くほど感染しやすく、右に行けば行くほど年齢が高くなります。グラフから、年齢が高くなるにつれて感受性が高く(発症しやすい)、年齢が低いほど感受性が低い(発症しにくい)ことが分かります。つまり、小児は成人と比して発症するリスクが低いのです(とはいえ「0」ではありません)。これらの理由から、幼稚園、保育園、小学校での登園、登校の自粛が最小限にされていたのかも知れませんね。
最後になりますが、小児の発症例の多くが市中感染(誰からもらったのか分からない)ではなく、家族内感染であるそうです。もし、長引く発熱、息苦しさ、基礎疾患以外の咳(せき)がある方は、大切な家族にうつしてしまう前に保健所の「帰国者・接触者相談センター」に連絡をしましょう。あなた自身とあなたの大切な人を守るために。
(了)